ウェストチェスターから車で約40分、コネチカット州のNew CanaanにあるGrace Farms(グレースファームズ)は、静かな高級住宅地の中に佇む80エーカーもの広大な敷地に広がる多目的施設です。


思わず通り過ぎてしまいそうなぐらいひっそりとした入口を抜けて敷地内を進むと、自然豊かな緑の中、土地の起伏に沿って建てられた川のように流れる美しい建築物River Buildingが見えてきます。River Buildingは曲線状のガラス張りの印象的な建物で、まさに建築と自然が一体となった美しい空間が広がっています。
このユニークな建物を手掛けたのは、世界的に有名な日本人建築家、妹島和世さんと西沢立衛さん率いる建築ユニットSANAA。2015年の開設以来、River Buildingは数々の賞を受賞しています。建物内には、コンサートやイベントに使用される多目的ホール、体育館、図書館、Tea Pavilionなど、様々な用途に合わせたスペースが備えられています。今年1月には、あの有名なチェロ奏者Yo-Yo MaもGrace Farmsにてコンサートを行いました。


施設内にはカフェも併設されていて、サンドイッチやスープなどの簡単な軽食を楽しめるほか、お弁当を持参して屋外の席でピクニックもお薦めです。また、Grace Farmsが人道支援活動の一つとしても力を入れているGrace Farms Tea &Coffeeがプロデュースするお茶やコーヒーも販売されているので、飲み物片手に敷地内をゆっくり散策してのんびり過ごすこともできます。

Grace Farmsは、単に美しい建築物や施設を作るだけではなく、「空間そのものが人々にインスピレーションを与え、より良い社会のために協力するきっかけになる」という理念のもと、自然・建築・アート・人々の交流が自然に生まれるような場所であることを大事にしています。実際に敷地を歩いてみると、その理念が伝わってくるような感じがします。
小さなお子様が走り回れるスペースも沢山あり、家族連れでも楽しめる雰囲気で、週末には様々なイベントも行われています。これから紅葉も始まって過ごしやすい季節。お子様から大人まで、家族で自然や建築を楽しみながら、ゆっくりとした時間を過ごせる場所として是非お勧めの場所です。
入場料は無料。詳しくはこちらのWebsiteより詳細をご覧ください。
今月の米語Watchです。
コラム『楽しい米語 Watch』
Flock Camera「フロック・カメラ」
Flock Camera(フロック・カメラ)とは、今アメリカ中で論議を呼んでいる車のナンバー・プレートを自動的に撮影・記録するカメラのことです。Flockはこの装置を開発したFlock Safety (「群衆の安全」?) という会社の名前です。全米の多くの州で、警察による犯罪捜査が効率的に推し進められるとして、Flock Cameraが導入されています。現実に多くの容疑者が車で逃走中に捕まったり、誘拐された子供が車の運行記録を活用した捜査で見つかった事例が報道されています。
一方、Flock Cameraの導入をMass Surveillance(大規模監視)として、プライバシー保護の観点から強く反対する声が上がっています。アメリカ憲法修正第4条の政府による不合理な捜索・押収から市民を守る原則に違反すると言うのです。Flock Cameraは犯罪に関与する車だけを追跡するだけではなく、一般市民の車の動向を把握・記録します。先日、この装置にアクセスできる警官が別れた女性の動向を逐一追跡し、そのストーカー行為が表ざたになり大きな話題となりました。同様の例は50件を超えるそうです。また、連邦政府が推進する不法移民の排斥にも利用されているという批判もあります。
Flock Camera推進側は、乱用の危険には留意しつつも、一般道路の走行中にプライバシーは期待すべきではないし、カメラの設置は、犯罪の解決だけでなく予防にも大きな効果があると言います。Public Safety(公共の安全)と Privacy(プライバシー)のバランスをどう取るのか。Flock Camera 論議 は、AI・監視技術が急速に広がるアメリカ社会の新しいジレンマを象徴する言葉になっています。
(参考)Flock Cameraのような車のナンバー・プレートを自動的に撮影・記録するカメラを、一般的にALPR (automated license plate reader) system呼ぶことがあります。
(旦 英夫 Rye在住 ニューヨーク州弁護士)
「週刊NY生活」「朝日新聞」「朝日ウィークリー」にて連載
著書「米語ウオッチ・アメリカの「今」を読み解くキーワード131(PHP刊)」 がNY紀伊國屋にて好評発売中